「……夢、なんだろうなぁ、これ。」
泣き疲れたのか人の膝の上で寝てしまった子供が起きないよう、小声で呟く。
子供……うん、子供だ。
ちょっと俺に似過ぎだけど。
って言うか多分俺自身なんだろうけど。
泣きながら何か喚いてたけど正直何言ってるかよく分からなかった。
知ってる、泣き方下手過ぎるのか呼吸苦しくなるんだ。
あと何喋ってるか自分でもよく分かんなくなってるんだ。
知ってる、と言うか今でも割と泣くとそうなるし。
ただまぁ分かったのは、今がどれくらいの時期かってのと、こいつが泣いた原因くらいで。
『か、あっ……ちゃんっ……!』
泣きながら呼ばれたそれに、頭を撫でてやるくらいしか出来なかったのだけれど。
多分今は、両親が死んだ後ようやく生活が落ち着いた頃で、落ち着いたからこそどうしようもなく寂しかった頃で……。
……多少なり違いはあるのだろうが、俺は母ちゃんに似ている……と言うより、似せている部分もあるから……間違うのは、仕方ないと思う。
まさかでかくなった自分自身だとは思わないだろうし。
それにしても……。
「……よりによって、今こんな夢見なくてもいいだろうにさ。」
今だから見たんだろうってのは分かってるけれど、思わず愚痴を零したくもなる。
……未だにある、会いたいって気持ちを突き付けられるように思えるから。
もう何日かしたら、倒しに行かなきゃならないのだ。
故人にもう一度会いたいという願いを叶えると言う、都市伝説を。
と言っても、殺してやるからあの世で会えよみたいな奴で、話聞いた時はおいこらふざけんなとしか思わなかったけど。
「……会える、もんなら……」
会いたいと、思う。
それは今でも変わってない。
会えるわけないと分かっていても、それでもずっと会いたかった。
例えばあんな方法じゃなかったら……俺は、会いに行こうとしてたんだろう、か……。
……昔の俺なら、そうしていたかもしれない。
例えば学園に来ていなかったら、例えば出会っていなかったなら……そういう選択も、あり得たんだろう。
だけど、出来ない。出来ないと言うか、やりたくない。
護りたい人達がいる。
守りたい約束がある。
それは、たとえ母ちゃんにもう一度会えるのだとしても、決して捨てられない、捨てたくないものだから。
ふと揺らぎだした意識に、抵抗せずに目を閉じる。多分、そろそろ目が覚めるんだろう。
……依頼が終わったら丁度盆の時期だし、墓参りに行こうか。
俺も、兄ちゃんたちも、元気でやってるよって。
一方的に話す事しか出来ないけど、何か伝わればいいなと思うし……。
「……これで、いいんだよな……母ちゃん。」
呟いた言葉に返る声はないけれど、何故か頷いてくれたような気がしたから……頑張ってこないと、だな。
(届かない言葉)『自分で選んだ道なら、胸張って進みな。前を見据えるその生き方は、間違っちゃいないんだから。』(とっても蛇足)『(しょんぼり)』『何で落ち込んでるんだいあんたは……』『会いに来てほしいわけじゃないけど……翼は僕には会いたくないのかなぁ……はっ、もしかして忘れられてる!?』『んなわけないでしょ。単に私の方が印象強いってだけでしょうよ。墓にきた時はちゃんとあんたにも話しかけてるじゃないの。』『そ、そうだよね……でも翼がちゃんと生きる事に前向きになってよかったねぇ。』『ま、私らの娘なんだ。心配いらないわよ。』(´・ω・`)と(`・ω・´)って顔で会話してそうな夫婦PR