夢を、見ていた……。
まるで記憶を順になぞるように、何度も繰り返される夢……。
過去からまだ見ぬ未来にまで及ぶ、長い長い喪失の夢……。
母ちゃんが死んだ。
父ちゃんも死んだ。
クーが殺されかけた。
そして……一つずつ、手にしたはずの大切なものを、護りきれずに喪う夢……。
家族も、恋人も、友達も、仲間も……何もかもが、伸ばした手をすり抜ける様に喪われる夢……。
鮮やかなまでに浮かぶ光景は、今まですっかり忘れていたものもあって……。
分かるのはただ、全てが喪失に繋がる記憶と未来の1つの形であるということ。
繰り返される夢のラストはどれも同じ。
最終的に何も護れず取り残されるだけ。
過去に既に起こった事は別として、喪う原因は毎度違う。
それでも、何をどう足掻いても喪う事だけは変わらない。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……喪失だけが、繰り返されていく……。
夢が終わり、次の夢が始まるまでの僅かな時間。
夢だったと気付ける僅かな時間に、繰り返される言葉。
『戦え……それこそが、唯一の……』
護る方法はそれしかないのだと、繰り返す声は自分のそれと同じで……。
……何度も繰り返される夢と言葉に、納得しそうになる。
元から自分はそういう考えだったはずだと、流されそうになる。
護りたい大切な人達がいて、護れるなら自分の命なんかどうでもいいんだって。
護れないなら意味なんてない。
死ぬまで戦って、そうして死ぬなら本望だったはずだって。
納得して、受け入れてしまいそうになる。
悲しかった
苦しかった
寂しかった
辛かった
怖かった
不安だった
口に出すことすら出来ずにいた喪失に関わる感情は、今もなお胸に巣食っているから。
もう一度味わうくらいなら……。
その可能性を少しでもなくせるなら……。
自分の命くらい、軽いんじゃないかって……。
けど……。
納得しかけるのに、納得しきれない。
何かが、ずっと引っ掛かる。
それじゃダメなんだって……。
そんな形を望んだんじゃないはずだって……。
他の方法なんて思い付かないのに、それでもなお違うのだと思う。
違う答えがあったはず。
自分はそれを知っていたはず。
……思い出せなくとも、確かにあったという気持ちだけで、突き付けられる回答を拒む。
護る方法は他にもあったはずなんだと。
拒めば再び闇の中、また喪失の夢が始まる……。
……俺が納得するか、あるいは納得せずともこの身が滅びるかでもしないとこの夢は終わらないんだろう。
もう嫌だ、見たくないと叫んでも、きっと変わらない。
だけどそれでもまだ……見付けたはずの答えを、諦めきれないんだ……。
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